近年、ボールにバックスピンをかけると飛距離が伸びるという情報がたくさん流れ、それ用のTバッティングの道具まで発明され販売されています。
ソフトバンクホークスの柳田選手も練習中にバックスピン用の道具を使用したとネットニュースで流れ話題になりました。
それぐらい、バッティングに対しての技術革新がおきているのではないでしょうか?
そこでここでは、バッティングにおける「バックスピン」について解説していきます。
目次
バックスピンとは?
そもそもバックスピンとは、バットとボールが当たるインパクトの際にボールに回転を与えて飛距離をの伸ばす技術になります。
この技術を覚えることによって、ロングヒッターになることが可能です。
打ってもゴロばかりで、打球が上がらず長打をたくさん打ちたい。
いい当たりをしてもなかなかボールが飛んでいかない。
たくさん、ホームランが打ちたい。
そんな方は、覚えておくことをおすすめします。
バックスピンの重要性
筆者が現役時代は、バックスピンを意識的にかけて打つ練習などしてきませんでしたし、考えもしませんでした。
とにかくヘッドを立てた状態から手首が帰らないようにボールを上から打つよう指導されてきたことを覚えています。
この手首が立った状態からボールをねじり込むように捉えると、ボールを飛ばすことができます。
このとき自然とボールがスピン状態になり打球が伸びる感覚をよく体験していました。
インパクト時に、バットとボールの角度で打球がフライになるのか、ゴロになるのかが決まってきます。
実はこういった、バットとボールのインパクト時の角度がとても重要になってきます。
バックスピンをかけるバットとボールの角度は、ボールの中心から下6ミリを叩くと自然とバックスピンがかかり、打球は上がっていき飛距離がでるようになっています。
なぜバックスピンが必要なのか?
では、なぜボールにスピンをかけると飛距離が伸びていくのでしょう?
それは、硬式ボールの構造にあります。
硬式ボールは、外側が軽く中心が重い構造になっています。
硬式ボールは、「コルク芯」に「ゴム芯」というスーパーボールのようなボールに「羊毛」の糸を巻き付けて牛革二片でこれを包み、頑丈に縫い合わせて作られています。
重さは、141.7g〜148.8g、外周は229mm〜235mmとなっています。
もちろんこれには、規定がありますので重さや大きさを変えることはできません。
このような硬式ボールの構造からボールの外側は、糸で巻かれているだけですので軽く、中心はコルクの中にゴムが巻かれているので外側に比べて重いということになります。
表面ですが、実は薄くて丈夫な牛革で作られてますので重量はそれほどありません。
このボールの構造が、バックスピンをかけると飛距離が飛ぶようになっているということになっているのです。
では、なぜ中心が重い場合、回転をかけると飛距離が伸びるのでしょうか、それは「慣性モーメント」の力が作用しているからなのです。
慣性モーメント
慣性モーメントとは、例えば電車に乗ったとき急カーブがあったとします。
その時、窓側に立っていると大きな遠心力がかかって外側に振られます。
しかし、真ん中に立っていると外側よりもそれほど振られません。
つまり、外側に重さがあるほど、回転を与えるにはより強い力が必要ということになります。
これと同じで、硬式ボールは軟式ボールなどと違い、総重量があり上記で説明したとおり、中心が重く外側が軽くなっていますので回転をかければかけるほど、飛距離が伸びさらにボールが回り続ける性質があるのです。
バックスピンのデメリット
ボールにバックスピンをかけると飛距離が伸ばせる構造はおわかりにいただけたと思いますが、実はバックスピンをかけすぎると打球が上がりすぎてポップフライになるので注意が必要です。
ボールに回転をかける意識が強いとバットとボールをこする形になり、打球は上がりますが飛距離が出ず失速するのです。
ゴルフでも同じで、バックスピンをかける技術がありますが、スピンをかけすぎると飛距離が出にくくなっています。
どちらかというと、ゴルフの場合は、低スピンをかける意識でいると飛距離が伸びます。
このことから、練習中では大げさにボールに回転をかける練習はしてもよいのですが、試合中にボールをこすった打球になってしまうと、キャッチャーフライや内野フライ止まりになってしまうので、中止が必要です。
軟式ボールのバックスピン打法は効果がない
硬式ボールと違い軟式ボールは、中が空洞になっていて硬式ボールより軽く、外側が重い構造になっています。
軟式ボールは、すべての素材がゴムでできていて上記で説明した通り、バックスピンをかけるとポップフライにしかならず、打球もあまり飛びません。
これは、変形エネルギーの大ききも作用しており、ボールに力がうまく伝わらない性質もあるのです。
なので、軟式ボールの場合は、ボールの中心を叩くようにしないと打球は飛ばないようになっています。
実は、硬式ボールしか打って来なかった打者が、軟式ボールを打つと上手く打てずポップフライばかりになってしまう原因はここにあります。
反対に軟式ボールの飛距離を伸ばすコツは、ボールの中心を芯で捉えボールを運ぶイメージで打つことが重要です。
最後に、フォロースルーをしっかりとり、イメージとしてはレベルスイングで打つようにすると打球が飛ぶようになっています。
バックスピンの練習方法
それでは、バックスピンの練習方法について解説していきます。
注意したいのは、練習中に意識してバックスピンをかけるのはOKなのですが、試合中はその意識は捨てましょう。
細いバットと速く動いてくるボールをアジャストするには、至難の業です。
プロの世界でも打率3割で超一流と言われているぐらい難しいので、練習中にボールを乗せるコツを磨くことに専念しましょう。
体が自然に反応するよう練習中に訓練し、本番でそれが知らずのうちに出るのがベストです。
Tバッティングでボールにスピンをかける練習方法
練習の1つにTバッティングがあります。
相手がいる場合は、トスしてもらいボールをこするように打ち上げる練習をしてましょう。
はじめは、大げさにボールの下を打つようにして打ちます。
打ち返すネットは、高ければ高いほうがいいです。
トスする側の人も真中付近にふわっと投げてあげれば、打つ側も意識してバックスピンをかけられます。
ノックで外野フライの練習をしてみる
リラックスしてノックバットで自らトスして外野フライを打ってみましょう。
バックスピンをかけるにはもってこいの練習方法です。
ノックもボールの上を叩いてしまうとゴロになってしまいますし、ボールの中心を打ってしまうとライナーになってしまいます。
ボールの下をもぐらすように下から叩くようにして、フライを打つイメージを持つと自然とバックスピンがかかってきれいな放物線を描くような打球が打てるようになります。
この感覚を覚えておけば、なかなか打球が上がらない選手は打球を上げるコツが得てして体で覚えられるようになります。
ですので監督・コーチにノックバットを借り外野フライを打ってみましょう。
実はこの練習方法は、打球を上げるコツだけでなく余分な力を抜けてなおかつ遊びの要素もあるので、楽しくできたりします。
自分で打球をコントロールできるので、何気ない練習方法ですがとても身につきやすいと思います。
メジャーリーガーも愛用の「スピンティー」
ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手が、練習で使用したとネットニュースで流れるとたちまち人気が出たTバッティング用の道具になります。
もともと、近年メジャーでは「フライボール革命」が普及しており、いかに打球を上げるのかが注目されています。
その結果、アメリカで開発されたのがこの「スピンティー」になります。
有名野球YouTuberなどが、動画で「スピンティー」を紹介したところかなりの反響があり拍車をかけ、さらに注目度が上がりました。
スピンティーとは?なぜ、バックスピンがかけられるの?
「スピンティー」とは、よくTバッティングなどで「置きティー」が使用されるのですが、ボールの中心から上を叩く癖がついてしまうデメリットがあります。
通常、ボールの上を叩いてしまうと打球が上がりにくくなります。
そのデメリットを克服したのが「スピンティー」になります。
動画を見ておわかりになるように、筒状のゴム製の支えが下からスポッとはまるようになっています。
これが、ボールを下から差し込んでも落ちないよう工夫されているユニークな発想の道具です。
ボールを下から差し込むよう入れますので、この状態でT打撃を行うと自然とボールの下を潜り込ませるように打てるので、打球が上がるという仕組みになっています。
これは、目で見たときにボールの下半分が見えているので、意識しなくてもターゲットがボールの下半分だけに、自然と絞られるので、そこをめがけてバットが出ていくようになっています。
このようにバッティング練習を繰り返すと実際に、ピッチャーが投げてくるボールを無意識にボール下半分を叩くイメージでバットでるようになり、打球が上がりやすくなりバットの軌道が自然と得られるといったメリットがあります。
注意したいのが、ミートポイントはボールの下を叩くのですが、意識しすぎるとバットが下から出る癖が付きやすく、アッパー気味にすくい上げるように打ってしまいます。
そうなると手首が上に反った状態になるので、打球は上がりますがボールにバットが負けてしまい力強い打球が打てなくなってしまいます。
必ず捕手側の手は、手のひらが返らないようにバットがたった状態からボールの下をくぐらせるように意識する必要性があります。
この点がわからず、とにかくボールを上げようと手首が返ってしまうバッティングフォームがいつの間にか癖付き、打球は上がるのですが力強い打球がなぜか打てなくなってしまうという致命傷にすらなってしまう悪い癖がついてしまうので注意しましょう。
フライボール革命とは?
近代野球のひとつに「フライボール革命」があります。
この理論は、ゴロよりも飛球のほうが長打の確率が高まるとしてメジャーリーグで脚光を浴びています。
これは、大リーグでは、データに基づいた極端な守備シフトが主流になりゴロの安打確率が低くなったのと、打球速度が158キロ以上で角度が30度前後のとき、8割以上が安打になるとデータが判明したのきっかけです。
これに着目したのがアストロズです。
2017年のワールドシリーズを制しそこで「フライボール革命」が広まったのです。
日本では、ゴロを打って進塁打を打ちなさいとか、ゴロを打つと守備の乱れからセーフになる確率が増えるといった指導で、どちらかと言うと「スモールベースボール」が主流でした。
しかし、近年メジャーリーグの「フライボール革命」やソフトバンクホークスの柳田選手のように意図的にフライを打ち上げた打撃フォームが目立ち、しかもヒットになる確率が増え点数が取れるといったデータも出ている以上、否定するわけには行かなくなってきています。
高校野球を見ていてもフォロースルーを大きく取ったスイングをする球児が増え、意図的に長打を狙ったバッティングフォームが目立つようになりました。
学術的にも、バットを地面に対して19度上向きの角度で、ボールの中心の6ミリ下側を叩くと、長打が打てるようになるといったデータも上がってきています。
そういった観点から、ボールにバックスピンをかけるといったバッティング理論が注目されてきているのだと思います。
ただ上記で説明してきたとおり、一歩間違えるとバックスピンを意識するあまり、打球速度が落ち、ポップフライになってしまうデメリットを忘れてはいけません。
プロ野球選手であっても、バックスピンをかけた打ち方をマスターするのには、とても難しい技術になることを忘れないでおいてほしいです。
「フライボール革命」ひとつにとっても、158キロ以上の打球速度を出せる選手が条件となっています。
ですので、そこまでスイングスピードが出せない選手が、意図的にフライを上げてもヒット確率は逆に下がってしまいます。
この辺を踏まえて、フライを故意的に打てばヒット確率が上がるといったそのような単純な発想ではないということを覚えておきましょう。
まとめ
3冠王を3度も獲得した落合博満氏は、バックスピンのスペシャリストです。
落合氏もバックスピンを推奨しています。
体格はそれほど大きくなく、ものすごいパワーヒッターでもありません。
でもあれだけ、軽く打っても飛距離が伸ばせる技術があります。
そのひとつに、ボールをうまく乗せるバックスピン打法があるのです。
ぜひ、体格に恵まれていなくてもロングヒッターになりたい選手は、バックスピン打法を身につけてみましょう。
コツさえ掴めば、飛距離は案外出せたりするものです。
ぜひ、一度練習にバックスピンを取り入れて実践してみてください。
バッティングのコツがわかり、もしかすると球界を代表するロングヒッターになれるかもしれません。
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